8年のフランス生活にお別れを (4) 〜歴史の糸〜

先祖たちは大量の古文書を残し、別に末裔がやらなくてもよさそうなものなのに、僕に歴史を学ばせ、行かなくても日本で十分楽しくやれただろうにフランスにまで送り出し、帰国の意思が急に降りた時に、展示会という形で僕の目の前に現れた。
先祖は一体何を思っているのだろうか。

しかし、フランスでマイノリティーの状態を経験しながら日本を考え、また身分や社会階級、人種民族の区別が色濃いフランス社会を体験したこと 。
そして、この近代という時代の断末魔を見たことで、自分のアイデンティティとそこから何をすべきかはわかった。

自前では教育費が出せないような貧困家庭に生まれた人、あるいは社会で差別されて生きるような人たちとも友になったし、移民の人や混血の人とも深く交流して、彼らのアイデンティティに対する問いや社会に対する鋭利な眼差しを見た。

日本では決して差別されることもなく、先祖代々カツカツとはいえ、決して貧困ではなく、全てがホームグラウンドである僕が、その状況を離れ、場合によっては差別されるし、どれだけ人に親切にされようが、本国人とは区別される外人というどこか肩身の狭いよそ者の状況を経験したことは僕にとって大きな財産となった。この経験が自分を確かに形作った。

カテゴリー: エッセイ パーマリンク