カトリーヌ・ドゥヌーヴに見るフランス人らしさ

さて、今回女史は、インタビューでフランスの映画界に対してもの申された。

「フランスでいい脚本に出会うのは難しい」と。

ただしこれは、一応最新映画のプロモーションのためにインタビューを受けたと女史はおっしゃっているが、映画のプロモーション自体していないし、後述する理由から、インパクトがある言質をとれなかったインタビュー制作側が、仕方なく目玉のトピックにした感じがあるので、彼女はそこまでこれに重きを置いてもの申した訳ではない。

まず、足を組んで、腕組みをして、インタビューアーの若い男が萎縮して見えるくらい怖いオーラ、非貴族ゴッドママの雰囲気が出ている。

ただ、この若インタビューアーがこれぞフランス人のジャーナリズム精神で、この怖い大女優に挑み続ける。そして、ドカンと構えて返し続ける女史こそが、いかにもフランス人の現代女性を体現し続ける。

面白いところをカットする。

「映画をやめてしまいたいと思われたことは?」
「もちろんあるわよ。船に乗って島に3、4ヶ月行っちゃうとか。(本当の意味でやめたいと思ったことはないと言っている)」

インタビューアーは食い下がって、しつこく引退を匂わせるようなことを聞く。
インタビューアーはもしかしたら、女史が嫌いなのかもしれない。

「映画界から船のもやいを解いて(Larguer les amarres)、さよならしたい?」
「Non、自分で最初から選んできていることだし、まだ演じ足りない。」

「何でまだ足りないとお考えですか?」
「だって、映画が好きだし、私の興味を惹くから。」

この時点で、女史は難攻不落の、口で絶対負かせられないフランス人女性であると、日本人も分かるであろう。

そして、しびれを切らしてダイレクトにインタビューアーが聞く。
「あなたはただの一度も引退を考えられたことはないのでしょうか?」
「いつかはやめるだろうけどね。」

「いつか」ですから。
この76歳の女史はまだまだ、映画も勉強のために見に行くし、引退する気などさらさらない。

そして、女史はSNS嫌いで、常に俳優がSNSに登場することで、スター性が失われると危惧している。
彼女は本物の銀幕のスターなのである。

「実生活でも銀幕でも煙草を吸われますが、煙草は演技において重要でしょうか?」
「今は煙草シーンが減ったが、煙草は語らずに絵になる。でも今は煙草は映画においてタブーね。」

「キャリアを作るのにストラテジーはありますか?」
「ストラテジー? 何でそんなこと聞くの? 良い映画人に出会い、いいシナリオの映画に出演すること。ただ、脚本家に時間と金がないから、いい作品がフランスにない。」

聞き返された瞬間にインタビュアーはちびっているはずである。

「ワインスタインのMe too事件から2年経ちますが、映画界は変わりましたか?」
「フェミニストはとどまることを知らず、目に見えて変わった。ただし、アメリカの映画産業のフェミニズムは行き過ぎているが、人に注意を促すと言う意味ではいいのではないか。」

そんな感じでダラダラとインタビューは続き、「別の道を選ぶとしたら、人類学者や建築家だが、既に遅いし、でも、遅くても夢を持つのはいい。そう選択していたとして成れたかもしれないし、成れなかったかもしれないし。」

などと、インタビューは結局何を聞きたかったのかわからない感じで終わっている。

もしかすると、引退のスクープを取るためのフランス的嫌味インタビューだった可能性があり、いなされ続けて、変なところで着地せざるを得なかったのかもしれない。

こうしてこのインタビューアーも、カトリーヌ・ドゥヌーヴ女史も、極めて観念的なことを延々と語った。

これが、観念的で、とりとめもなくとりとめのないことを延々と笑いもなく議論するフランス人の性質をよく表しているし、特に女性においては、何を言われても、意に介さず思うことを言い続けて、強そうに振る舞い続けるという、いかにもなザフランスを我々に見せつける。

もちろんシャイで内気な女の子や本物の貴族もいるが、フランス人の一般女性は現代では大体こういうドゥヌーヴ女史型で、怖いし、偽ブロンドだし、偽貴族だし、可愛げがあるという感じではない。
くわばらくわばら。
男はこういう女性の前では、食い下がろうと頑張るが、決して勝てないし、へなちょこ。

私は、フランス人女性が怖くて、教壇で震え止まらず、心筋梗塞を起こす可能性も高まってきたし、いるだけで寿命が縮まってしまうので、そろそろ船のもやいをといて、出航する。

カテゴリー: エッセイ, 社会批評 パーマリンク

コメントを残す