黄色いベスト運動(1)〜どうしてこんなことになったのか〜

4.黄色いベスト運動がフランスの産業に与える影響

~片手を失った生徒のママの同僚のお話~

天候のせいもあり、フランス人は根暗で、ユーモアに乏しいという国民性がある。そういうこともあり、心を病む人が多い。こうした病を加速させるのに、不経済は十分な要因となる。

この冬は、珍しく雨が少ないし、10月ぐらいまで明るかったが、霜月・師走ともなれば、さすがにパリの冬、どんよりとした曇りしかない天候は、気を滅入らせる。
そして、不景気真っ只中のクリスマスがことしもやってくる。
悲しかった出来事を消し去るように。とはいかず、不景気や社会不安の中の行事は、社会のどんよりとした雰囲気を加速させる。
クリスマスは、家庭でやるものであるが、大半を占める失業したり所得の低いフランス人たちは、盛大にクリスマスをやるというより、質素にやるということになる。クリスマスだからと言って、シャンパンをじゃぶじゃぶ飲んで、おご馳走にありつくなど金がかかるし不可能だ。

シャンゼリゼで、イルミネーションの中を嬉しそうに、爆買いする中国人を見た日には、感傷的になるに決まっている。
金がありすぎて徒らに使うのも虚しいかもしれないが、経済的にゆとりがないのも気持ちが暗くなることとして十分である。

さて、こんな不景気の冬にもなれば、常日頃大学で生徒と接していると、年齢が近いことや、あまり先生先生していない僕のいい加減な性格もあるのか、時折生徒から、プライベートな悩み事を相談されることが少なくない。

田舎から来た生徒にとっては、うつろで冷たいパリの人や、なれない雑踏やめまぐるしい生活リズムなど、パリでの学生生活は辛いことが多いらしい。僕もこうしたパリは好きではない。田舎は人も街もゆったりしていて暖かいから、ナイーブな生徒などパリのあらゆることに馴染めないのである。

景気が良くて、お金があれば、人間らしい暮らしができる部屋に暮らし、馬鹿みたいに出歩いて酒飲んで、大都会を満喫し、若い無鉄砲な時代を楽しく暮らせるかもしれないが、学生はみんな小部屋をシェアしたりして、日本の学生のようには出歩かず、爪に火をともすように暮らしているし、パリは気質的に明るい都市ではないから、そういう陽気なノリもない。

さて、今回は、この黄色いベスト運動が巡り巡ってひとりの生徒を苦しめ、その女子生徒から、話を聞くことになった。この生徒は、不幸なことに、地元の友達を数日前に自殺で失ってしまった。そこに、お母さんが、パリのではないが、ある地方で黄色いベスト運動に参加して怪我をし、同僚の人は、投げようと拾ったものが爆発物であり、手を失った。

お母さんはこの一部始終を目撃したという。

これらに酷くショックを受け、なかなか勉学に集中できないと言う。

フランス人は悲しみを隠さない人が多く、こういうタイプの人は、悲しい時に普通に授業中でも泣いたりする。街でも泣いている人を見ることがある。

僕はひとしきり話を聞き、かける言葉が見つからないけれども、時が過ぎ行くのを待つしかないよね。そんな状況下でも大学に来ただけ偉いし、宜しいです。と言うよりなかった。この子にはそれだけではなく、立て続けに不幸が襲っているから、うつ病になったりしないよう、祈ることしかできない。

彼女は、お母さんからのスマホメッセージにある、手を失ったその同僚を、みんなで黄色いベストを着て見舞いに行った写真を見せてくれた。僕も黄色いベストの人が爆発物を触って手を失ったニュースを知っていたので、あの人お母さんの同僚なんだねという話になった。

お母さんは、日本でも有名な某大手製薬会社で働いており、この製薬会社では、職工の半分が黄色いベスト・もう半分が反対派。そして、首脳陣はもちろん反対派ということで、会社が割れているという。

このように、世界的に有名な某製薬会社において、思想を巡って企業内が争うことになっているということは、ルノーだって、エールフランスだって同じようなものであろう。

ただでさえ産業力のないフランスにあって、企業が内部で揉めに揉めるということは、不景気を推し進め、社内の融和のなさは後々、大企業の分裂などの産業の弱体化を進める遠因となっていくやもしれない。

 

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