副ゴッドファーザーになりまして。~代父という欧州の疑似家族制度~

日本においては、親方と弟子・親分子分というように、血縁関係のない人間同士が親子の擬似関係を結び、家族的結束を図ることがある。

ヤクザの何とか一家というものも、親分の元に子分が集い一つの家としての体裁を保つが、その際その子分たちは兄貴と弟という兄弟である。

また、社会学者の森岡清美氏が「大イエ」などと呼ぶように、かつての武家社会では、主君の家来を総称して家中といったように、主君と家臣全体で大きな家を構成した。

結束を図る際に家族の擬制をするというのはヨーロッパでも同じで、ゴッドファーザー・ゴッドマザーというものが存在する。

そしてマフィアも、親分はゴッドファーザーで絶対的な父として君臨するし、マフィアのメンバーは家族的血の結束をして社会に蔓延る。

かつて泊めてもらったナポリの友人の家は、ナポリを根拠にするイタリアの有名マフィアカモッラ一家の近所にあるが、そこはカモッラの人間が数年前に銃殺された床屋もすぐそばにある一帯である。

優しい保健所の獣医のこの家のお父さんがマフィアだったら最高に面白いと思っているのだが、イタリアンマフィアの特徴は、カタギの世界と分離されている日本の任侠の世界と違い、一般市民のふりをして社会に存在することにある。

そのため、警察官や政治家にも普通にマフィアがマフィアであることを隠して存在し、メディアのドンで政治家、ベルルスコーニ前大統領もマフィアと言われている。

アメリカのイタリアンマフィアとて、カタギの社会に入り込むから、映画ゴッドファーザーのジョニー・フォンテーヌのモデルとされるフランクシナトラは、歌手のツラしてマフィアであることはほぼ確定した話である。この配役は硫黄島の戦いに従軍して負傷した歌手兼俳優のアル・マルティノだが、顔や雰囲気はシナトラというよりはトニーベネットに似ているが、この霧のサンフランシスコことトニーベネット御大もマフィアと目されている。

この映画のせいでマフィアのイメージが強いゴッドファーザーであるが、普通にフランスでも現在の一般社会に存在する制度で、ゴッドファーザーをParrain(パラン)と言い、ゴッドマザーをMarraine(マレーヌ)と言う。もちろんフランスでの映画ゴッドファーザーのタイトルはそのままパランである。そして、これはカトリックが織り成した文化である。

笑ってしまうことに、日本のヤクザが神仏に拝むように、マフィアはカトリックであることも多く、それはゴッドファーザーのシーンにも表されているが、このゴッドファーザーというのは、すなわち子供が洗礼を受けるにあたり、代父という擬似的な父親に任命され、以後この子を信者の道に導いていく存在である。そして、信仰と生活が一体であった昔には、一般生活においても影響力を持ち、親が死んだ場合の後見人としての役割をも果たした。

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