スポーツジムに見えるフランス社会

ここで、残念ながらホモセクシャルでも、願望とは裏腹にバイセクシャルでもない僕は、ちょっと弱ってしまうことがある。
口説いたり人を見つめるのは自由であるが、サウナで微笑まれながら無言で延々と見つめられたり(そういう時はタオルをかぶってしのぐ)、ラグジュアリー感満載の更衣室でズボンを履こうとしていたら、「これ君のパンタロン?」と話しかけられ、筋肉型フィルコリンズみたいなハゲの弁護士から御名刺を頂戴し、弁護士のイベントに来ないかとか、御食事に何度も誘われた。

何でか知らないが、僕はそっちの白人からモテることが多い。
多分日本の女がブサイクでも120%白人からナンパされるというのと同じロジックだと思われる。何なんでしょう。

例えば、ユダヤ人ゲットーがそれを残しつつ、一大ゲイタウンとして発展したパレのマレ地区を歩けば、美人な女ってこうやって街で男から見られているんだな、という擬似VR体験ができる。ちなみにマレ地区はパリのゲイタウンだから洗練されていて小綺麗だし、ユダヤ飯屋やヘブライ語の本屋などがあって個人的に好きである。
また、飲むにせよ、綺麗な店で飲みたかったらホモの店に行け、とフランスで言われるぐらいホモの人の美意識は上等なので、マレのバーは普通トイレ掃除なども行き届いている。しかもユニクロやMUJIもあって、日本人には便利な街でもある。

そんなマレ地区を僕が歩けば、とにかく一緒に歩く女の人が爆笑しちゃうぐらい、焦げるような眼差しで頻繁に見られるし、カウンターでビールを飲めば、「君は美しい。」と耳元で囁かれビールを奢られ、その奢ってくれた人はアジア人ボーイの専門家なのか、「小さい頃父親の仕事で横浜にいた」と言いながら、ブルーライトヨコハマを口ずさみ出し、苦笑いで乗り切ったこともある。

僕の先輩方は物は試しだから一度行ってこいなどと無責任に背中を押してくださるが、からかわないでくださいよ。

全くもって世の中は万事不如意であり、女にモテたいところ男にしかモテぬというのは、人生の一大苦行であって、日本に次帰ったら滝行でもしなくてはならない。

さて、このジムでは、男と女が数人掃除人として雇われているが、全員黒人である。
彼らはマシーンをピカピカに磨きあげ、彼らのおかげで、サウナもハマムもシャワーも更衣室も高級ジムの名に恥じぬ清潔を保っている。

毎日この作業を繰り返す彼らはきっと月収15万円ももらっていないであろう。

自分が呑気に運動をする傍で、本当に奴隷のように掃除をして回る彼らを見ると、いつも微妙な気持ちになる。

AIが人間社会を席捲すれば、彼らはこういう平等社会の名のもとの底辺から逃れられるのだろうか。
汚く臭く辛い重労働からホワイトカラーの仕事に就けるのであろうか。

当事者ではないから、想像しかできない上に、逆に高慢を浮かばせる軽薄な同情をするつもりもない。しかし、このジムに行き、よくいるフレディーマーキュリーにそっくりな口髭タンクトップの男や、受付の美少年、あるいは黒人の掃除人を見るにつけ、条件反射的に西洋における格差やLGBTなどについて考えざるを得ない。

ゲイの人たちはネットワークで守り合って暮らしているから、金持ちも多く金払いももちろん良いわけだが、彼らが思い切って自分らしくいられるのは、こういうジムの中や、ゲイタウンにとどまっているし、かたや掃除人は黒人しかいないし…

パリならまだしもフォンテーヌブローで手を繋いで歩くゲイカップルなどまず見ない。
掃除人が白人というのもフランス全土で見たことがない。

どこでも自分らしくいられること、あるいは、誰もがつきたい職業につこうと目指せること。
そういう恵まれた人はこの地球上一握りなのかもしれない。

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