不法移民と生活保護

地元の友人の警察官はつい先日パリ郊外の署へ転属となった。

そして、先般の捕物は、夫にDVを受けている真っ只中という妻からの通報により、Évryというパリ南東30キロの現場へ駆けつけるというものであったそうだ。

彼はここへ出動し、この家族が黒人であることを認め、屈強な夫が妻を殴り続けているのを羽交い締めにして逮捕し、署へと連行した。

発覚したのは、この移民黒人家庭は、皆不法移民で、フランスの国籍を持つ訳でもないのに、六人の子供とともに、子供の三人目から貰える子供手当と、両親の失業手当でアパートに暮らしていることであった。

ところが、彼が逮捕した暴力夫は、フランス人ではない為、即釈放となった。

「Yûtaこれがフランスだぞ。」

友人はこう呆れ果てて、僕に語ってくれた。

ジプシーが、フランス国籍を持たないから、逮捕されても裁かれずに犯罪を繰り返すというのはよく聞く話である。

しかし、不法移民が法で裁かれないのに、フランス法で定められたフランス人の為の生活保護は受けられるということが俄かには信じられない僕は、別の女友達にこの顛末を話した。

すると彼女は、

「そうよ。これがフランスよ。」

と言って、彼女のお母さんの話を聞かせてくれた。

お母さんは50代で、鬱病のために無職の生活保護受給者である。
しかし、彼女の生活保護費は微々たるもので、アパートも満足には借りられる額ではなく、普通大家はこういう人間には貸し渋る為、金持ちの長兄の支援を受けて、小さなアパートに一人暮らしをされているという。
また、長い間、HLMという低所得者向けの公営住宅への入居を申請しているものの、この公営には不法移民の黒人ばかりが入居し、全く当選しないと言う。

そして女友達も、フランスが不法移民に、生活保護、失業手当、子供手当を与えているのは、本当のことであると憤った。

フランスの子供手当は、生計の足しにするには十分に過ぎ、三人以上の子供を作り、大家族になればなるほど手当額が増え、格安の公営にも入れ、子の教育や生活の高望みをしない限り、両親は無職でも十二分に暮らせてしまうものである。

しかし、独居の無職ほど、フランスでは生活保護の恩恵にはあずかれず、フランス人の単身困窮者が、不法移民の非フランス人の大家族の生活以下になるという本末転倒が起こっている。

煙草を燻らせながら、こんな話をして、僕と彼女はメトロに乗った。

メトロでは、たった三駅の間に、二人の物乞いが勧進をした。

僕は、

「ホームレスって生活保護を貰えるのに、自分の選択でホームレスでいる訳でしょ。」

と彼女に聞いた。

すると、

「単身者では、生活保護だけでは家を借りられないし、ホームレスを収容する集団シェルターもあるけれど、汚くて居られたものではないそう。」

と説明してくれた。

フランス人の身寄りなきホームレスに行き場がなく、不法移民が大家族の生活保護で家に暮らし生計を立てられる状況。

一体全体フランスはどうなっているのか。

自国民を守らず不法移民を手厚く保護する。

地元へ戻ったその夕刻、僕はスーパーへ行った。

レジには、僕がフランスのレジ係で一番だと思っている黒人のおじさんがいた。
愉快で愛想が良く、優しいおじさん。

人種や国籍に関係なく、良い人は良い人、悪い人は悪い人。
そんな道理は知っている。

しかし、移民の問題はフランスにいよいよ深い。

僕はやるせない気持ちを抱えて家に帰り、夕飯のハーブソーセージを炒めた。

カテゴリー: エッセイ, 社会批評 パーマリンク

コメントを残す