フランスの定年と年金と利権と

目下、企業勤めのフランス人の定年退職は63歳である。

そして、公務員が原則的に61歳と2年早い。

日本人なら、老後に何をしていいかわからない場合、退職間際には会社という一つの社会から切り離されることを不安がり、退職後には暇を持て余す場合もあるが、フランス人は、バカンスと定年をこよなく愛する人々であり、退職が待ち遠しくて仕方がない。(バカンスと定年退職

2年ほど前にリタイアした私の親友のお父さんは、お母さんのそれが数年先だから、パリに家族を置いて、ブルターニュのセカンドハウスに入り浸って、CWニコル級田舎生活を満喫している。

そのため、早くに退職して年金生活に入れるなら、それを歓迎するのがフランス人の精神なのである。

定年を延長する人もいなくはないが、あまり、定年延長や嘱託という文化は見られず、皆爽やかに老後の生活に入っていく。

また、公務員は一般の人より2年定年が早いから、大学などでは、大御所の先生方が完全に老人となる以前に教壇から去ってしまう。今の61歳なんぞ中年で、まだ、頭も体もバリバリなのに、「もう定年?」というような感じである。日本では私大の定年が60代後半で、学習院などは70だから、国公立の先生も私大へ移籍したりして年老いるまで現役でいるため、フランスはあっけない。

時に面倒を見なくてはならない学生のためなどを理由に、少し定年を延長される方もおられるが、だいたい教授陣は50代の終わりでお弟子さんを取らなくなり、フェードアウトして行かれる。

目下フランス日本学の世界では、世代交代の時期に差し掛かっており、数年前から大御所の引退が始まっている。

この世代は、西洋における日本学を牽引されてきたり、逆に外人向け日本語教育のパイオニアの先生方なので、中々さみしいものである。

そして、教師どころではなく、定年が異常に早い公務員たちがいて、国鉄・パリ市交通局・電気ガス産業連合の人々には、なぜか50代中盤に定年が設定されている。

そのため、今、国家やパリ市の財政健全化のために、政権が優遇されてきた彼らの定年利権を一般並にすべく、定年と年金給付年齢を上げようとしており、そのためにストライキが起こった。(ストライキ大国のフランスに住めば

フランスは平等平等と言っても、全く平等社会ではない。

定年年金セットの一つをとってもそうである。

不平等は不平等にもなれば利権にもなる。利権側は適当な主張をして、甘い汁の確保に努め、不平等と感じる人は、これを批判する。

今回は、昨9月13日のパリ市交通局の12年ぶりのストライキに関連して、労働者たちが、早く退職できる権利を主張し、これこそ、甘党のフランス人らしい権利主張だから、ご紹介したい。

 

このニュース番組では、公会計大臣のGérald Darmanin (ジェラール ダルマナン)が、「公務員の定年は普通61歳なのに、どうしてパリ市交通局は56歳なのだ」と問いを投げかけ、場面はストライキのデモに移り、パリ市交通局の労働者の言い分が展開される。

マークさん(58、定年済、元市バス運転士)
様々な道路事情に苛まれ、客の応対もする。週末も働けば、朝4時始業、寝るのは深夜1時、クリスマスも年始も、公共サービスのために束縛される。
退職の特例は、特権ではない。

コリンヌさん(現役駅員)
年始もクリスマスも朝5時から始業、6週に1回しか週末は休めず、夜勤もする。
私は朝5時には人なんか寝てると思うし、夜2時にもそうだと思うけど。(意味もないのに夜勤早朝出勤をしていると強調)

ムニールさん(メトロ6番線運転士)
僕たちは安全第一の仕事をしている。想像してみてくれ。64のおじいちゃんがメトロを運転していたらと。目が見えづらく、動きも鈍いのにメトロを運転して。800人の乗客の命をおじいちゃんが担えるのか。車両を直せるのか。

別のコリンヌさん(勤続25 メトロ6番線駅員
朝勤務は5時から昼の12時まで、夜勤なら18時から朝1時まで。家に3人の子供がいるのに。
今日は半休、土曜は仕事、日曜も仕事、クリスマスも結構仕事、年始も結構仕事、最近は人々がストレスに苛まれ攻撃的だから、危険な仕事になりつつある。同僚は唾を吐かれたり、罵倒されたり、でも我々は笑顔を絶やさない。だからむしろ人々は、我々を理解して、支持してくれなきゃいけないの。


N’importe quoi. (ナンポルトコワ。バカ言ってんじゃねえ。)

突っ込みどころしかない。

まず、結構な税金を給料としてもらっているのに、公務員として公に奉仕するという精神が全く感じられない。

週末クリスマス年始と、フランスの皆が休む時に、働いてくれていることには感謝する。
また、確かにパリには危険な人間が多いから、危ない目にあうというのもわかる。
しかし、そんなことは応募する以前から百も承知のことであろう。
週末もクリスマスも年始も、基本給にプラスして特別手当がつくから、そこは既に補填されている。
そして、休暇だって丸一日オフの明け番だって、ヴァカンスだって潤沢にある。
だから、彼らが口を揃えて言う休日出勤は、このご時世、あまりにも早い退職と高い年金に対する理由になりきらない。

こんな言い分が通るなら、警察官や消防士はどうなるんだ。

また、背景として認識しておかなくてはならないのが、日本とは違って、フランスの鉄道労働者は、電車やこの仕事が好きだからなるというものではない、ということである。
仕方がないからその仕事につくという類の職であり、いろいろとジューシーな甘い汁があることをわかった上で鉄道労働者になるのである。

彼らの言い分を聞いても、はたから彼らの仕事ぶりを見ていても、仕事に対する誇りや愛着は感じられない。

実にメトロの運転手など運転は荒いし、駅員は態度が悪く、笑顔などまずない。
しかも、始発や終電で駅員がいることなどない。本当に。

仮にも、彼らの頑張りが見えているなら、我々だって少しは彼らの特権を認めたっていいさ。

また、今時パイロットだって健康管理をして70近くまで空を飛んでいるから、90歳のおじいちゃんならまだしも、64歳のおじいちゃんがメトロを運転していたら怖いというのも理由にならない。

こうして利権が侵害されそうになるとストライキをしたり、被害者ぶったり健康問題を持ち出したり、ナンセンスである。

そもそも論としてこれを言うと差別と言われるが、仕事が嫌なら早め早めに転職を志して頑張ればいいし、金がないなら、フランスにはDUコースという大学の夜学があるのだから、働きながら頑張って大学を出て、もっといい職業に就けばいい。

フランス人は原則的に嫌なことを我慢してまで居心地の悪い空間に居座ったりする民族ではないから、彼ら鉄道労働者が、退職や年金の利権を味わうために勤続していたところ、急に自分たちの利権が社会問題化し、国家からメスが入りそうになったから騒いでいるだけの話なのである。

彼らのフランス語の話し方を聞いていても、誰に聞いても同じになる返答も、彼らの論の甘すぎる構築の仕方を見ても、彼らが学のない頭の悪い人たちだということは一目瞭然である。

これでは、フランスの多数派を説得することは間違い無く不可能である。

せいぜい喚くが良い。

フランス共和国の公務員たるもの、国是の平等を表向き遵守せねばならない。

面白いのが、こうして利権を主張するときは、「平等!」と言わないね笑

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