最低賃金とヴァカンスで感じるヨーロッパ

太陽に飢えたフランス人の夏のバカンスの行き先は、何も太陽の理由のみで南欧を選ぶわけではない。
クロアチアやポルトガルなど、フランス人が大挙して押し寄せるバカンスの行き先があるが、それは、極めて経済状態に関連している。
カツカツのフランス人がそれでも何とか太陽と共にヴァカンスを楽しめる、安く上がる行き先が、クロアチアやポルトガルなのである。

まず、前提として、フランスも給料が悪く、消費税などの重税がのしかかるから、決して裕福な国ではない。
また、社会格差はいよいよ激しく、貧困国と言っても過言ではない。

フランスでは2015年統計の、手取りの月収の平均が、会社幹部4141€、教師や宗教家や現場監督など中間層が2271€、勤め人1637€、職工1717€である。
そして、全フランス人の手取りの年収の平均がだいたい250万ぐらいである。
こんなので、消費税が通常20%、軽減税率でレストラン10%、一般の食料品や軽食、公共料金が5.5%、薬や印刷物が2.1%で、重くのし掛かってくる。

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http://www.journaldunet.com/business/salaire/france/pays-fra

繰り返すが、フランス人はカツカツの生計である。
だから、それでもヴァカンスに行こうとする白人フランス人たちは、ヨーロッパの貧困国へ向かわざるを得ないのである。
家族旅行なら、どうしても出費が嵩むので、日本やアメリカに行ける人間は富裕層で、普通はクロアチア、東欧、ポルトガル等の物価の安い南蛮諸国が行き先にならざるを得ない。

また、ヨーロッパの若者が日本を旅行する際に、山谷や釜ヶ崎の木賃宿に泊まったり、バックパックで歩くというのは、金をかけられないから当然の現象と言える。

そして、パリの人々が国許へ帰るかヴァカンスへ出て、パリががらんどうになる8月、パリに残っているのは移民街の黒人やアラブ人になる。
即ち彼らは、ヴァカンスに出られないのである。

では、その他の国の経済事情を賃金と失業率から見てみる。

イタリアや北欧のように、最低賃金を設定していない国もあるが、北欧は、概して平均月収が25万ぐらいで頭一つ抜けて、イタリアは15万ぐらいでフランスと競ってくる。
そして、国全体で最低賃金を設定しているわけではなく地域ごとに設定するスイスでも、たとえてヌーシャテル州で最低賃金が月収で3000€で、スイス人の平均月収は2019年で4877€と50万を超えてくる。物価も高いが、ヨーロッパの経済はスイスの一人横綱である。

そして、設定されている西洋諸国の2018年の最低賃金の月収は以下の表のようになる。
ちなみにこれは、手取りではなく全体なので、ここから税金が引かれるから、フランスの最低賃金の手取りは13万14万ぐらいになる。

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https://www.journaldunet.com/management/salaire-cadres/1126847-smic-europe-italie-portugal-belgique/

ポルトガルやギリシャの最低月収は10万に達せず、ハンガリーやクロアチアなどは5万前後である。

失業率は、本2019年で、スペインが14%、イタリアは9.7%、フランスは8.7%、イギリスが3.8% 、ドイツが3.1%である。

ルクセンブルク大公国やモナコ公国を除いて番付にしてみると、

スイスが一人横綱、大きく水を開けられているという意味で大関不在、関脇小結に北欧、失業率を加味して、前頭筆頭にイギリス・ドイツが来て、平幕にフランス・ベルギー・オランダ・アイルランド、幕尻にイタリア、十両にスペインで、幕下に上からスロヴェニア・ポルトガル・ギリシャ・バルト三国・多くの中東欧諸国ということになろう。

そのため、フランス人が何とか海や太陽を安く楽しもうと、ポルトガル、クロアチアやブルガリアなどの東欧に夏のヴァカンスに行くのはこういう背景があるのである。

日本人は、西洋に対してどういうイメージを抱いているのであろうか。
機械化や近代化をある程度達成しているという意味において、先進的であることは間違いないが、内実は貧困でもある。

スイス人は極めて利口な民族で、永世中立の単独経済で、一国のキャパだけで、世界へ野心も抱かず、地に足のついた経済を回し続けて、横綱になる。

それ以外の西洋各国経済は、イギリス・ドイツがなんとか踏ん張っているものの、平幕のフランス以下はまさに、十両へ落っこち、下手をすれば、靭帯を損傷してあっという間に十両からも転げ落ち関取でいられなくなった相撲取のようになりかねない。

この感覚が、他の国にもヨーロッパ全体にも、とてもじゃないが構っていられないと、反EUが吹き荒れる要因でもあり、内向きの思考、ナショナリズムが再勃興する原因であるということも言える。

とにかく、西洋は経済が豊かとは言えないから、日本人は、盲目的に西洋は先取先進であるとか、政治経済は西洋の真似をすればいいというような、明治以降の見上げる目線からは脱却すべきである。
比較して反面教師にするなり、スイスやルクセンブルク大公国やモナコ公国を参考にしてみるなり、そろそろ視点を切り替える必要がある。そう考える。

参考)
https://www.combien-coute.net/salaire-moyen/suisse/
https://actufinance.fr/actu/salaire-minimum-en-suisse-6968135.html
https://www.tvacalc.com/info/21/Taux-de-TVA.html
https://www.journaldunet.fr/patrimoine/guide-des-finances-personnelles/1166094-salaire-moyen/
https://www.combien-coute.net/salaire-moyen/italie/
https://www.touteleurope.eu/actualite/le-salaire-minimum-en-europe.html

 

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最低賃金とヴァカンスで感じるヨーロッパ への3件のフィードバック

  1. ピンバック: 09/03NEWS!! エスパー伊東の「現在」とか 恋愛相談に対する河野外務大臣の回答とか なぜガイルはアメリカ人に絶大な人気があるのかとか | ネットサーフィン見聞記

  2. ピンバック: 2019年09月02日(月)の日常 | okaz::だめにっき

  3. Sisyphe (@634takeiteasy) のコメント:

    久しぶりにフランスのことが気になって調べ始めてここを知りました。非常に参考になりました。厳しい世の中です。ありがとうございます!

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