鉄道オタクに考える日仏文化

日本には鉄道に心酔する人がたくさんいる。
乗ることが好きな乗り鉄、撮影することが好きな撮り鉄、鉄道模型。鉄道はとりわけ男性の一大趣味の一つである。
そうでなくとも、トミカもそうだが、プラレールというものもまた、子供の乗り物のおもちゃとして日本にしかない精巧さを秘めている。

日本では線路脇やプラットフォームでカメラを構える鉄ちゃんを見ることは茶飯事であるし、鉄ちゃん向けの鉄道会社のイベントなどもある。しかしフランスでは鉄ちゃんを見ることはない。

フランスでも鉄道オタクはいないことはないらしく Ferrovipathe(フェロヴィパットゥ)という専門用語もあるようだが、権威ある辞書にこの単語は出てこず、友達に聞いても、聞いたこともない単語で何のことかと言っていた。
通常はAmateurs de trains (アマトゥール ドゥ トラン 鉄道愛好者)と普通に「鉄道好き」と形容するようである。

鉄ちゃん・鉄オタという一見説明が必要そうな特殊用語が普遍化している日本と、鉄道好きと言わなくては何のことかわからないフランス。この違いは、そっくりそのまま、鉄道趣味が普遍化しているか否かの違いになる。

では何故鉄道趣味が日本で普遍化し、フランスでは普遍化しなかったのであろうか。

まず、電車のデザインがあると思われる。
日本の電車のデザインは独特である。JRも私鉄もいくつもの型の電車を有し、それぞれの会社や車体や色の個性が電車ににじみ出ている。
鉄道趣味でない人も、JRだ京王だ小田急だ近鉄だと一目でわかるデザインをしている。
フランスは国鉄か都市のメトロかトラムしかないから、車体の種類もいくつもないし、近くで見ると洗ったことがあるのかというぐらい汚れている。
観光客などがフランスのTGVや電車を見て物珍しいとは思うかもしれないが、毎日のように見ればとても絵になるような代物ではない。
フランスの鉄ちゃんもオリエント急行のような豪華列車や汽車のマニアと模型に集中しているようであるが、頷ける。

汽車のイベントもあるようだが、鉄ちゃんが少ないだけに、それほど盛り上がっていないようであり、大人というより子供連れの家族向けのような感じである。

そして日本は鉄道に長距離で乗ること自体がエンターテイメントと化している。

ご当地の駅弁文化やお座敷列車、行き先不明のミステリートレインなど、鉄道の旅それ自体を楽しもうとすることは日本人のエンタメ好きの性質をよく表すものと言える。

フランスでは電車に乗るのが大好きですなどというのは聞いたことがないし、みんなどちらかといえば嫌いである。
最近日本の駅弁を流行らせようとしている人もいるが、工業製品のサンドウィッチなど車内の食堂車の軽食類は不味くて高いし、電車は遅延するし、車内は一等車でも掃除が行き届かず、椅子の向きも変えられず、電車はストレスフルな乗り物として認知されている。

日仏鉄道文化の差は、日本人フランス人の旅行に対するアティテュードや工業デザインの違いによって生じるものである。

とりわけ、旅先のみを楽しみ途中経過は手段でしかないフランスの旅行と、旅程も含めた旅の全行程を一つのものとして楽しもうとする日本人の性質の違いは、鉄道オタクの普遍化の強弱に影響する。

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