バカンスと定年退職 日本人VSフランス人

人生、あるいはライフコースと言った方が収まりが良いかもしれないが、その流れの上で、バカンスは息抜きであり、退職は大きな転換である。

これを喜びという形で積極に捉えるか、退屈というような消極に捉えるか、あるいはどうでも良いことであると無関心でいるかで随分人生の味は変わる。

フランス人はバカンスや退職をほぼ例外なくこよなく愛する。
仕事の時は次のバカンスはいつ来るやと日数を数え、定年退職なんぞ首を長くして待っている。

日本人はどうかと言えば、たまの休暇は大体の人間にとって嬉しいに決まっているが、それを持て余す人もいれば、退屈と感じて早く仕事生活のルーティーンに帰還しようと願う者までいる。
この点に関しては、フランス人が日本人のここが理解不能であると、いつも口をあんぐりする点である。

しかし、長い歴史軸で見て、バカンスや旅行というものの元祖は我々日本の先人、とりわけ江戸時代人である。
物見遊山を愛し、伊勢参りという人生上のビッグイベントの旅行があり、武士も湯治願を出せば休暇が取れた万民の文化としての湯治、東海道五十三次のようなエンターテイメント旅行。
則ち我々日本人が、旅行やバカンスをこよなく愛する遺伝子を持っていることは事実である。

しかし、今、日本人が羨望の眼差しをもってフランス人のバカンスを見上げ、日本のバカンスが下火になれば、定年退職もなんだか暗いものであるかのように見えるのは、ひとえに、地球の回転する速度は変わらないのに、その内部の時間の流れが格段に早まった現代社会において、人間らしくあろうとするか否かのアティチュードが日本人とフランス人では違うからだと言える。

そして、そのアティチュードの違いが現れる最たるものは趣味である。
趣味があれば、実に暇をしないで済むし、仕事場以外での人々との関わりがあるから、精神的な孤独はさておき、社会的な孤独は回避できる。
例えば、本の虫であった私の祖母は、「私は読書が趣味だから本当に暇しないで済む」とよく言っていたが、日本でも趣味人なら、バカンスや老後の生活はそれほど退屈ではないはずだ。

しかし、どうも、フランスに比べ趣味人が現代の日本には少ない気がする。

フランス人は、男も女も絵画・料理・菓子作り・読書・ガーデニングといった個人インドアのもの。音楽などというインドアながら他者と関わることが多いもの。トライアスロン・サッカーなどの団体スポーツといった集団アウトドアのもの。どれかの趣味は必ず持っており、結構真剣に打ち込んでいる。

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