Belleville -面白怖いパリのカルティエ、キリシタンのまぼろし-

物価高のパリでは下手をすれば、ビールが1パイント8ユーロぐらい平気でする。ただビールを楽しむだけで、軽く数千円は飛んでしまう。 ここには、安くて美味しい中華屋はあるし、ビールも3ユーロぐらいで飲めるから、不潔で物騒なことを除けば、重宝な街でもある。
ベルヴィルに最初に足を踏み入れたのは、パリに来て2日目のこと。フランス人の友達の飲み会に誘われ出かけて行った。メトロを降り、改札を抜ければ、黒人が怪しげなチケットを売りさばく。
出口を上がれば、不細工な立ちんぼがお出迎え。あまりの街の汚さに拍子抜けし、バーのトイレの汚さに驚愕する。

そんな僕の席の左隣に座ったのは、僕好みの、美人で、清楚で、品のいい女性である。頭も切れる。
刀の鯉口を切り、パリ初の恋口を切り開こうとした私ではあったが、彼女が席を立った時に、みんなが一言。
「彼女カトリックだからやめたほうがいいよ」
またしても、拍子抜けである。 フランス人たち、特にパリの人々に混じればわかる。
いかに現代の白人フランス人たちに、敬虔なクリスチャンがいないかということを。
通過儀礼的に洗礼を受ける程度で、真剣に信仰する人が少ないことは、復活祭などのミサに行って、老人しかいないことを見れば感じられる。

「皆曰く、敬虔なクリスチャンは、結婚まで固く貞節を守る、亦た、交際は結婚を前提とする。いずくんぞ、その女と交際するや。」 「吾、クリスチャンの理を解す。則ち、刀は抜かず。」

フランスに来た頃は、今以上に若く青かった。 サルヴィルの汚れの中にキラリと光るカトリックの女性に、オールドファッションのフランス女性を見た2日目の夜であった。
僕は洗礼を受けようと心に、誓わなかった。

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