フランスとコンプライアンス 〜教職と芸事と闇営業と…何もかも萎縮する時代〜

さて、このコンプライアンスの時代にあって、目下日本ではお笑い芸人の闇営業先が詐欺集団やヤクザがらみなことが随分と後になって発覚し大騒ぎになっているようである。

もとより、食べていけるようになれた芸人は武勇伝として、若かりしころの給与明細が数千円しかなかったなどと語り、さもそれが武勇であるかのように語る。芸能はその対価を算出することが極めて難しいから、客を呼べない時代には芸人の金の取り分は減る。芸能事務所というのは口入屋だから、所属する芸人に仕事を割り振ってやって、その上がりを手数料として取る。

売れない芸人がそれでも自分の芸で稼ごうとすれば、マージンをはねる事務所を通さない営業の方が美味しいと感じて当然であるし、売れている芸人とて芸人である以上マージンを取られずに自分の懐に金を入れようと思えば事務所を通さない闇営業を好むに決まっている。

これは構造上よくある家庭教師の引き抜きと同じである。家庭教師の会社に月額3万円を払って家庭教師を頼んだとして教師の取り分が1万5千円だとする。ここに家庭教師の会社に発注することをやめて、2万円でどうかと教師に頼めば承諾がある。注文者は1万円も浮き、教師も5千円得する。

しかし芸能事務所としたら芸人の口入を一括して受け入れてやる安定を約束していながら、これを抜けられることになり、これを許容すれば業態として成立できなくなるから、これを看過する訳にはいかない。

また今はコンプライアンスコンプライアンスとこれを芸能や相撲など興行の世界に持ち込む時代だから時代として興行の仕事に関連する人間は難儀である。

僕もフランスで闇営業を素人ながら芸事に関してやる人間として、芸事と金の難しさを改めて感じさせられる。

最近はパリへの稼働率が悪くなっていて遠ざかってはいるが、そろそろ復活させようと思っているジャズライブ、これは完全なる闇営業である。

もちろん、普通はレストランやバーで歌うからそれが反社会的勢力ということは起こりにくいが、ピアニストなんかは、謎のロシア人のパーティーの演奏などを頼まれたりするから、そういう際どい発注もあるであろう。僕ももし発注されたら面白いから行く。

音楽界隈はどこでもそうかもしれないが、これも芸事のひとつであるから、フランスでも闇営業が普通である。

闇営業をしない人はごくわずかで、フリーランスのアーティストとして最低限の社会保障を受けながら生活をすることがフランスでは可能であり、この社会保障を受けるアーティストだけは全てのライブを国家に申告する。その場合年間数十回の活動実績が正規で必要のため、これに該当するアーティストたちは一回の出演に給与明細を求め、公的な収入にする。しかし、そうでない人間たちは、カシェと呼ばれる出演料を山分けして微々たるものを得るのみである。

これは申告しないブラック収入であるが、警察や税務署は芸能に関しては目をつぶってくれている。そんなところに権力として介入し、数百円の税金を取り立てたとて何にもならないし、そこにメスを入れたら芸能は死ぬ。

カテゴリー: 社会批評 パーマリンク