黄色いベスト運動(1)〜どうしてこんなことになったのか〜

5.黄色いベストたちと一般人に共通する思い ~だから過半数が支持してしまう~

 

 

フランス人の多くは、黄色いベストではないし、これに賛同しないものも多い。

しかし、賛同しないものも、市民であるがゆえに、増税は堪える。

これが、主だって、黄色いベストたちの行動を非難こそすれ、根底にある動機を非難できない理由である。

フランスは大国といえども、日本から考えてしまうと極めて経済的には貧しい国と言える。

最低賃金とその手取りを見てみよう。

最低賃金 込み込み 手取り
時給                                          9,88€                                          7,82€
月給                1 498,47€               1 184,93 €
年収                 17 981,60€                14 219,13 €

手取りの最低月給は13万円ぐらい。手取りの最低年収は160万ぐらい。

これで、パリだと家賃の平均が1平方メートルあたり30ユーロ、フランス全体で11ユーロである。30ユーロを単純に4000円としても、パリでは刑務所みたいに、10平方メートルの家に住むのに既に4万円だから、最低賃金では暮らせない。

それでは、平均給与はといえば、2017年度の会社員の平均月収が1637 ユーロだから、やっていけない。

もちろん、銀行員とか、大企業の管理職とか、高給取りもいるが、こちらでは、月収が2000ユーロ(23万ぐらいか)を超えていたらいいよねという基準だから察していただきたい。

ちなみに、国家公務員で、年季奉公の最末端の位の、パリ第七大学講師を掛け持つ私の月収は手取りで20万ぐらい。フランスでは悪くない給料だ。

しかし、平均的に悪くないといえども、これではまかないきれない。

物価高のフランスにあって家賃9万を引き、日々の食費と遊興費で全てチャラ。食い込んだら親のカードを切って切って切りまくる。

3ヶ月前の引っ越しで出費が嵩んだせいで、懐は一層と寒い。

人はよく、パリ大学の博士課程で講師やっててすごいですねなどと言ってくれるものの、内実は情けない有様で、こうなのだ。肩書きに騙されてはいけない。

フランスで暮らすとは、運良くホワイトカラーになれても、こういう状況だと本当にみなさまに知っていただきたい。

 

 

はっきり言ってこの国に住み続ける限り、生活は成り立たないし、モテぬ男の皮算用で、万が一にもフランスの平均的な給料をもつ女と結婚し家庭を持ったとしても、家のキャパを広げ、食費は増え、となると超カツカツ。貯金などできない。

そして、激安の治安の悪い地域になど住めるわけがないから、安全な街に暮らすことになるが、安全な街は物価が高い。

また、子供なんかが増えていけば、日本になんかそうは帰れない。

おそらく日仏家庭でフランスベースの人は里帰りが相当大変だと思う。

 

 

通常こちらの先生方や、研究者や博士課程は、研究のため日本に行きたくとも、自前の金では無理だし、こっちの人間は親とて給料が普通は悪いのだから、親の金をも頼れない。

こんなわけで、どうやって大学や研究所の乏しい予算の中から、飛行機代を取ろうかとか、補助を得て滞在費を得ようかとかあくせくしている。

こう考えてみると、日本人は普通は恵まれている。

僕は先祖代々一度も大金持ちになったことなどない、カツカツの家系に生まれ、それを宿命に負った人間である。フランスが誇る社会学者ピエール・ブリュデューが言うように、社会的な立ち位置というのは普通再生産されていくから、僕が突然変異して大金を得るということも考えにくいし、子孫ができたとしても、それは難しい。

とはいえ、僕は、現代の普通の日本人を親に持つ子供だけあって、身内の金を頼りながら、こっちに6年以上もいられているのだから、日本は経済的にすごい国なんだなと思う。

 

 

さあ、フランスでこうして仕事をして暮らしてみると、家計は赤字に赤字を重ね、しかし、肩書きだけは一応ホワイトカラーでゴツくて偉そう。ということで、江戸の貧乏侍ってこんな生活なのかなと、思ってしまう。

見掛け倒しの極地。

「国立パリ第七大学博士課程兼講師(ATER)兼東アジア文明研究所」

という詐欺でもできそうな冗長な肩書きをひっくり返せば、

「月収20万、一人で生活が賄えないアラサー親のすねかじりバカ学生講師」ということになり、30歳を目前に苦笑しかない。

もうそろそろ独り立ちしたいと、真剣に考えている。

フランスのホワイトカラーも晩婚化が進むし、出生率も白人は日本人女性と同じで2を切るけれど、フランスでは若い人生がひと段落して、結婚して家庭を持てるという環境には30歳やそこらではならない。

自分のことでさえ賄いきれないのだから。

 

 

ということで、これがパリやパリ近郊の普通の人の生活と思ってください。

 

 

さらに、税金事情といえば、僕は税金で月に5万円ぐらいを差っ引かれている。

さらには消費税が20パーセントのフランスにあって、スーパーで買い物をすれば、大したことない買い物でも5000円はいき、それがすごく家計を圧迫しているのである。

感覚的には、牛乳300円、トイレットペーパー500円、そこそこの肉魚夕飯用一人前1000円、水一本200円という感じで、野菜以外は割高だから、雑費や食費がすごい。

それでいて、失業率は9%、我々の税金から彼らへの補償が補填される。そして、移民への手当もそう。

税金がこれ以上高くなるのは無理。

だから、車移動で暖房燃料費もかかる田舎の人には、燃料税なんかが上がったら、もうそれこそ、既に火の車の家計が木っ端微塵に爆発する。

この動画の8分20秒からの女性の暮らしぶりが、フランスの田舎の人の実態である。

ということで、「もう税金が上がるのは無理だ!」と言う叫びから起きたデモであり、こちらでは僕のような世界的に見ても、れっきとしたホワイトカラーでさえ、多くが貧乏だから、根底ではそのデモの動機に同情を禁じ得ないのである。

虚しい。実に虚しい。

 

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