孤独とフランス人・孤独と日本人 (下) パリで考える自由と孤独編 孤高とボエームと粋 〜山内マリコ『選んだ孤独はよい孤独』によせて〜

1. 孤独と弱みあるいはエロス発露の相関性

Stingは、NHKのSONGSでこう語った。Message In The Bottleで、孤独であることをSOSしたら、世界中の人々から、自分も孤独であるというレスポンスが返って来たと。
学生時分そして、教師の傍、ジャズ歌手をして日々を送り、ドラマーのスチュワート・コープランドに誘われたことで、The Policeを結成し、伝説のロックスターになったSting。Stingの音楽の中には、ジャズやレゲエなど色々な音楽のベースがあり、歌詞もギリシャ神話が出て来たり、高尚で知的で、韻を綺麗に踏んでいるものが多い。かつて、韻に魅せられて和歌や漢詩を研究しているイギリス人に、でもあなたたちにもStingがいるよねと言ったら意気投合したから、日本人やイギリス人は韻を無意識に好む習性があるのかも知れない。
Stingは孤独な男であり、これまた韻をキメているSo Lonelyという曲で、So Lonelyと叫びまくっている。プロモーションビデオでは都営地下鉄浅草線の電車内で口パクで叫んでいる。

 

そういうStingは、9.11のテロ当日にトスカーナでライブをし、Fragileで幕を開けた。その10日後には、アメリカのテロ追悼番組でFragileを歌った。パリのテロの後、閉鎖されていたバタクラン劇場の再開に際しても、Stingがライブをし、Fragileで幕を開けた。Fragileの儚い旋律も、孤独なStingの感性が産んだ名曲。世界史に残るミュージシャンである。

 

Stingは孤独を隠さない英国人。英国人の気質の分析はいつの日かするとして、フランス人は孤独でありながら、それを隠す性向がある。前編で書いたように、女性を中心に、なんとか自己対話して、自分の孤独な現況を幸せであると思い直そうと腐心する。
また、フランス人は自分のFragileな面を見せたがらない。弱みは人に見せない代わりに、苦虫を噛むような顔をして、日々を送る。彼らが、自分の弱さや短所を隠そうとする傾向は、僕が6年来パリに暮らしてフランス人と交わる中で、一度として自虐ネタで笑わせてくれる場面に出会わないことから明らかである。ハゲまみれのフランス人なのに、自分はハゲラッチョチェケラッチョなんて、絶対誰も言わない。歌丸と楽太郎のハゲと腹黒のおきまりのちゃかしあいのようなことは誰もしない。

 

フランス人は太陽に育まれた地中海方面の南部の人を除けば、ユーモラスでなく、根暗で、ペシミスト、得てして皮肉屋。日本の稀代のお笑い芸人である明石家さんまや松本人志があれほどの爆発力を持つのも、辛い過去や貧困の幼少期などを負っていて、それを笑いに変えるたくましさがあってのこと。
フランス人には悲しいことや辛いことを笑い飛ばすような文化はなく、あるいは、親しい人たちで愛ある茶化しあいをして笑い合うこともない。ペシミスティックに孤独に考えて考えて考えて、うつ病になるか、いつもの仲間でネチネチ語り合って、時を過ごす。冗談でも毒づいたりすることは、Fragileなフランス人の心を覆う攻撃的且つハリセンボン的なオブラートがそれを許さない。誰かが面と向かって誰かを批判するようなことは時にあるが、そんなことをすれば、あいつは私を傷つけたとかなんとか始まって、喧嘩、絶交に至る。フランス人は、Fragileで繊細な人たちなのだ。彼らの生命力はそこまで強くはない。

 

また、全体的にフランス人はむっつりしている。エロスも全部むっつり型で、彼らは日本のAVの大きな購買層である。大島渚の愛のコリーダとか日活ポルノとかああいうのを好み、下ネタが大好きなくせに、腹立たしいことにそしらぬ顔をしている。

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