パリの街並みが残されたわけ 〜その偶然と必然〜

・パリ特有の使いにくさ

パリは、19世紀の街並みに、地下は19世紀から掘られ出したメトロという古い古い、前近代的な街である。

ということは、僕も17区にある19世紀の建物に住んだことがあるが、大方、建築物の中に水道や電気がなかった時代の建物に、据付でそういうものを引いた、間に合わせの現代スタイルの生活になる。

実際にそういう建物の中に住んでみると、冬は寒いし、申し訳程度の細い配管は家の壁を這っていて、常に水回りと、電気回りなどのインフラのトラブルに悩まされるのが日常の暮らしになる。

また、シャワールームやトイレなど、水回りの位置や洗濯機を置く場所などは、昔の間取りに、近代設備を無理矢理に合わせたことが多いから、家の使い勝手もいいとは言えない。動線も悪い。

だから、こっちの男たちの多くが、DIYをするのが当たり前で、水漏れのする配管のパッキンを替えるとか、ちょっとのことなら自分で修理するテクニックを持っている。

メトロにせよ、地下道も列車の軌道も車体も、全体的に小さく歩きにくく乗りにくいし、普通はエスカレーターもエレベーターもないし、あっても壊れていることが多い。

街が古いだけに、バリアフリーの真逆だから、子供や障害者や年寄りには行き過ぎた負荷がかかる。

また、東京駅のように西へ行くにも北へ行くにもそこに行けば大方よし、という国鉄のハブ駅がない。例えば、在来線のフォンテーヌブロー方面やTGVのマルセイユ・ニース・イタリア方面など、南方面はリヨン駅、北方面は北駅、東方面は東駅、というように、方向別で、国鉄の主要駅が分かれていて、それが結構遠いから接続が悪い。

そして、自動車時代を想定していない街づくりだから、一方通行だらけで、狭い裏道を歩行者を阻害する形で車が入ってくる。

大通りといえども、日本の東海道の車道や、京葉道路や環七のような車のための道というよりは、せいぜい馬車通行に便利な時代の車道だから、舗装も悪ければ、方向転換にも適さないし、よく追突事故や接触事故が起こる。

僕もバスに乗っていて3回ぐらい追突と接触事故に遭遇し、バスが数十分も停車したり、全員降ろされたことがある。

また、西銀座地下駐車場のような地下駐車場は時折あるが、パリは車を想定していないだけに、日本のような、路地裏のあちこちのスペースを利用した駐車場があるわけではない。路上駐車なので、車が道の左右を塞いで溢れかえり、渋滞は起きるし、歩くのにも邪魔くさいし、大変である。

かといって、ストライキ・遅延・急な運休など、公共交通が不確かなフランスでは、通勤に車でパリに登る人も多いので、車が減らず、大気汚染も北京並みという空気の悪さもある。

なので街並みは美しく素敵だが、すこぶる住みにくく、不潔で、現代社会に対応できない街の中で人がひしめくという辛さがパリにはある。

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