拙者、不本意ながら、不法移民になりまして。(2)〜移民社会の人種差別のエトセトラ〜

フランスで意味不明なことに巻き込まれることは、フランス人をしても常のことである。日本人なら外人だから役所に行くことも増え、より巻き込まれることが増える。

拙者の場合は、こうなったら、お馴染み皮肉大会を仕掛け候。

大学では自分が不法移民化した現状報告をしなくてはならないので、それとともに皮肉をかましまくる。皮肉祭りで騒ぎ立てて、とりあえずネタにする。みんなからは「うっせー野郎だな」と思われているに違いない。
今回は大学・美容室・学習院の会(パリ桜友会)で皮肉りに皮肉った。

僕の副査のフランス人の先生は、先年に別の日本人教員がビザの難癖で日本へ数ヶ月一時帰国する羽目になったことと合わせ、「なんなんだよこのところのビザ発給は」とうんざりされ、小役人の無能さや、件の黒人・アラブ人の警備員が恣意的に小さな権力を振り回していることに納得され、怒っていらした。

教師に数ヶ月も抜けられると、大学としてもカリキュラムの編成を急遽変更し、当座の代用教員を探すことになったり、てんやわんやになるのである。

しかも、想定外のことだから、ただでさえ教師たちは忙しいのにさらに学科運営が混乱する。休職が本人の病気なら仕方がないが、犯人は国家であり、その国家公務員の人間に対してのこのビザの仕打ちだから、皆それは憤る。

同部屋の日本人の先生も、「子供の送り迎えに幼稚園に行くと、黒人の人たちは妙な団結があって、黒人が来ると、通用門をみんなして仰々しく開けてあげたり、かたやアジア人なんかを遠ざけたりするから、世川さんの体験めっちゃわかるわー。」と。ちなみにこの先生はレイシストでも右でもなんでもない。移民社会で日仏ハーフのお子を持たれる普通のママとしての体験から同情して下さっただけだ。

在仏30年選手の僕の美容師さんも、マクロン政権下で、初めて警察からビザ発行の連絡が期日以内に来ず、しれっと期日が切れてから更新されたとのこと。

学習院の先輩も、40年選手で、3回目の10年ビザ更新で、今までこんなことなかったのに、期限以内にビザが発行されなかったとのことである。

この先輩は、フランス人と結婚され、息子さんがフランス国籍なのに、その父親に対してこの仕打ち。

お世話になる学習院の先輩ご夫妻の次女の方も、提出した書類をこのたび役所で無くされ(たと役所に説明され)、朝から、再度ビザ更新待ちであるという証明書をもらいに並ばれたそうだ。

今上陛下の御学友もおられれば、陛下の後輩にあたる史学科卒業の拙者を始め、フランスに暮らす学習院の臣民の面々をこのように扱うとは、さすがは厚顔無恥のフランス共和国。フランス王国ならそういうこともなかったに違いない。あまり変な真似をすると、パリの慶應三田会やら早稲田稲門会あたりと集団的自衛権を行使し、フランスの王政復古派と同盟を結び、共和制殲滅王政復古作戦を敢行致し候。

そうなったら僕の美容師さんにも一番臭いパーマ液を持って駆けつけてもらわなくてはならないが、凄腕な彼女もちゃんとこちらで店の経営に成功し繁盛され、学習院の先輩方も皆さん立派な地位を築かれており、こんな素敵な方達が家族もろともビザで悩まされるなんて、憤りを感じる。
余談だが、日本人の髪の毛というのは、猫っ毛でもない限り、実はごわく硬く直毛ゆえに、髷でも結っておけば別として、かっこ良く西洋風髪型にするのは大変なのだ。経験をして、西洋人の美容師に髪の毛をいじらせると、レゴブロックのヘアスタイルになる。それでいて、自分の腕を自慢して、満面の笑みで「素敵です」などと言われるから、ぶん殴りたくなる。

散切り頭を叩いて文明開化の音を鳴らしつつ150年、日本人の頭髪を洒落て切るためには、我々の頭髪に適するように改良され蓄積した技術と伝統を持つ日本人美容師に頼まざるを得ない。それ故、拙者の如く美意識の高い伊達男を始め、ほとんどの在外邦人は、行きたくても現地の西洋人の床屋・美容室には行け申さず、地方の人はパリなどに登りつつ、ヨーロッパの大都市に数件ずつしかない日本人の美容室、あるいは、訪問してくれる美容師さんをお頼み申し上げ候。

また、僕の美容師さんはパリの日本人みんなにおすすめしたいぐらいの傑作の人物だが、彼女のもとへは、全仏からお客さんが来るし、マッサージやら話術やらお通しのコーヒー・茶菓子に至るきめ細やかな接客など、日本の美容室のおもてなしを求めて、白人やアラブ人女性までもが行きつけにしている。だから、日本人の美容師が不法移民などになって店を閉めざるを得なくなれば、我々は実に困る。

マクロン大統領も熟女フェチなら、日本の美熟女は特に優遇しないと。否、マクロンさんはブス熟女の方が好みか。だからだ…

さて、日本も消えた年金とかがあるけれど、書類を無くすとか、わけのわからない論外の手違いを起こすのもさすがはフランスの無能小役人だよなと思うが、みなさん不法状態になったらまずいので、頑張って延々と並ばれたらしい。

ただ、僕の場合は、研究者・学生を一手に引き受ける特殊な学生都市の警察庁舎に行かなくてはならず、ネット上の予約票を持っていないと問答無用で通してくれないから、並んでも無駄。また、警察の二転三転する意味不明な指示にしたがったり、門番どもと不毛な押し問答をしたり、これに頭を下げたり、懇願したりするのは、絶対に許さないので、引き上げたわけである。

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